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加齢で疲れやすくなる理由を医学博士が解説|NMNとCoQ10によるエネルギー産生の仕組み

2026.06.29

加齢で疲れやすくなる理由を医学博士が解説|NMNとCoQ10によるエネルギー産生の仕組み

年齢とともに「疲れが抜けない」と感じる理由を生理学的に解説。細胞の発電所と呼ばれるミトコンドリアの仕組みと、活力維持に不可欠な3大成分(NMN・NAD+・CoQ10)の相互関係を医学博士の視点から紐解きます。

年齢とともに変わる「エネルギーづくり」の話。疲れやすさを、細胞の働きから考える

年齢を重ねるごとに誰もが直面する、活力の低下やコンディションの変化。
本記事では、細胞内の「ミトコンドリア」におけるエネルギー産生の生理学的メカニズムと、それを支える主要成分(NAD⁺、CoQ10、NMN)の相互関係について、医学博士の視点からアカデミックに紐解きます。単なる気力や根性の問題ではなく、体の中でエネルギーを「つくり、使い、回していく仕組み」の本質に迫ります。

私たちの体は、毎日エネルギーをつくりながら動いています。
歩く、考える、心臓を動かす、体温を保つ。眠っている間に体を整えることにも、エネルギーは使われています。ふだん意識することはほとんどありませんが、私たちの体は、食べたものと呼吸で取り込んだ酸素を使って、細胞の中で絶えずエネルギーを生み出しています。
では、年齢を重ねたとき、このエネルギーづくりは変わらないのでしょうか。
若いころは、多少の無理をしても翌日には動けた。ところが、いつの間にか、ちゃんと寝ても疲れが残る。午後になると集中力が落ちる。休日に休んでも、体の重さが抜けきらない。
こうした変化は、よく「年のせい」と言われます。
もちろん、加齢は関係します。ただ、生理学的に見ると、もう少し具体的な見方ができます。年齢とともに変わるのは、単なる気力や根性ではなく、体の中でエネルギーをつくり、使い、回していく仕組みそのものかもしれません。
その中心にあるのが、細胞の中で働くミトコンドリアです [1,4]。

活力の源はどこにあるのか?細胞の発電所「ミトコンドリア」の仕組み

ミトコンドリアは、よく「細胞の発電所」と呼ばれます。
発電所という言葉は、少し大げさに聞こえるかもしれません。しかし、体の中で起きていることを考えると、これはとてもよくできたたとえです。私たちは食べ物から栄養を取り入れ、呼吸によって酸素を取り込みます。その材料を使って、細胞の中では体が使える形のエネルギーがつくられています。
そのエネルギーの代表が、ATPと呼ばれる物質です。
ATPは、体の中で使われるエネルギーの通貨のようなものです。筋肉を動かすときにも、脳が働くときにも、心臓が鼓動を続けるときにも、このATPが使われています。つまり、私たちが「元気がある」と感じるとき、その奥では、ATPをつくる仕組みが安定して働いていると考えることができます [1]。

細胞内の発電システム:ミトコンドリアが栄養と酸素からATPを作る仕組み

細胞内の発電システム:ミトコンドリアが栄養と酸素からATPを作る仕組み

反対に、疲れやすい、回復しにくい、夕方になると急に体が重くなる。こうした感覚の背景にも、エネルギーをどのくらい安定してつくれているか、という問題が関係している可能性があります。
では、ミトコンドリアは、材料さえ届けば自動的にエネルギーをつくってくれるのでしょうか。
実際には、もう少し複雑です。

エネルギーは、一気につくられるわけではありません

発電所に燃料が届いても、それだけで電気が生まれるわけではありません。燃料を処理し、いくつもの工程を通して、ようやく使える形のエネルギーに変えていく必要があります。
体の中でも同じことが起きています。
食べたものから取り出されたエネルギーは、細胞の中で一気に完成品になるわけではありません。いくつかの反応を通り、少しずつ形を変えながら、最終的にATPという形へ近づいていきます。
この流れを支えている成分のひとつが、CoQ10です。
CoQ10は、サプリメントの成分として知られていますが、もともとは体内でつくられている物質です。ミトコンドリアでエネルギーをつくる流れに関わり、その工程が途中で滞らないように働いています。 [2]
少し言い換えるなら、CoQ10はエネルギーづくりの流れをつなぐ、小さな運び役のような存在です。
大きな工場を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。設備がそろっていても、必要なものが次の工程へ届かなければ、全体の流れは止まってしまいます。機械そのものが壊れていなくても、受け渡しがうまくいかなければ、十分な出力は出ません。
CoQ10は、その受け渡しを支える成分です。主役として目立つわけではありませんが、こうした目立たない流れが保たれているからこそ、ミトコンドリアはエネルギーをつくり続けることができます。

エネルギー産生のメカニズム「力を取り出すNAD⁺」と「次へつなぐCoQ10」

エネルギーづくりの「流れ作業」とCoQ10の中継リレー

ただし、CoQ10だけでエネルギーづくりのすべてが決まるわけではありません。
食べたものは、体の中に入っただけで、そのまま元気に変わるわけではありません。ごはんも、肉も、野菜も、まずは消化され、細かくほどかれ、そこから体が使える力が少しずつ取り出されていきます。
この「材料から力を取り出す」場面に関わっている成分のひとつが、NAD⁺です。
NAD⁺は、体内にもともと存在する成分で、栄養素からエネルギーを引き出していく反応を支えています。サプリメント成分として知られるNMNは、このNAD⁺を体内でつくるための材料のひとつとして位置づけられています。[3]
一方で、取り出された力は、そのまま体を動かすエネルギーになるわけではありません。ミトコンドリアの中でさらに受け渡され、いくつかの工程を通りながら、ATPという体が使える形へ近づいていきます。
ここで流れをつなぐ役割を担っているのが、CoQ10です。
つまり、NAD⁺は「食べたものから力を取り出す」場面に関わり、CoQ10は「取り出された力を次へつなぐ」場面に関わっています。NMNは、そのNAD⁺につながる材料のひとつとして考えると、位置づけがわかりやすくなります。
こうして見ると、CoQ10もNAD⁺も、そしてNMNも、ただ「元気によさそうな成分」として一括りにするものではないことがわかります。
大切なのは、成分名だけを覚えることではありません。
その成分が、体の中でエネルギーをつくる流れのどこを支えているのかを見ることです。
そうすると、エネルギーづくりの全体像が少しずつ見えてきます。

エネルギー生産の連動マップ:NMN・NAD +・CoQ10の役割と関係性

エネルギーづくりを、流れとして見る

ここまで見てきたのは、体がエネルギーをつくる仕組みと、そこに関わる成分の違いです。
大切なのは、成分名だけを見るのではなく、その成分がエネルギーづくりのどの場面を支えているのかを知ることです。NAD⁺は力を取り出す場面に、CoQ10はその流れをつなぐ場面に関わる。そう捉えると、健康成分の見え方は少し変わります。
では、CoQ10は実際に、何をどのように運んでいるのでしょうか。
その手がかりになるのが、「酸化型」と「還元型」という違いです。次回の記事では、この二つの違いを入口に、CoQ10がエネルギーづくりにどのように関わっているのかを詳しく見ていきます。


参考文献

[1] Nunnari J, Suomalainen A. Mitochondria: In Sickness and in Health. Cell. 2012;148(6):1145-1159.
https://doi.org/10.1016/j.cell.2012.02.035
[2] Bentinger M, Tekle M, Dallner G. Coenzyme Q–biosynthesis and functions. Biochemical and Biophysical Research Communications. 2010;396(1):74-79.
https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2010.02.147
[3] Covarrubias AJ, Perrone R, Grozio A, Verdin E. NAD+ metabolism and its roles in cellular processes during ageing. Nature Reviews Molecular Cell Biology. 2021;22(2):119-141.
https://doi.org/10.1038/s41580-020-00313-x
[4] López-Otín C, Blasco MA, Partridge L, Serrano M, Kroemer G. The Hallmarks of Aging. Cell. 2013;153(6):1194-1217.
https://doi.org/10.1016/j.cell.2013.05.039

著者:佐藤洋平

佐藤 洋平(さとう ようへい)
医学博士・理学療法士。オフィスワンダリングマインド代表。
脳科学、心理学、医学生理学を専門とし、研究論文や学術知見を、一般の方にも理解しやすい言葉へ翻訳する活動を行っている。企業のヘルスケア製品開発やエビデンス構築、研究支援、情報発信支援などに多数参画。
専門領域は、加齢、認知機能、睡眠、運動、行動変容、ヘルスケアマーケティング。科学的根拠と実生活を結びつける視点から、健康やウェルビーイングに関する情報発信を続けている。